再処理事業所 高レベル廃液ガラス固化建屋(管理区域内)における制御電源遮断による塔槽類廃ガス処理設備の排風機故障等について(原因と対策)
2024年11月13日(水)に発生した「再処理事業所 高レベル廃液ガラス固化建屋(管理区域内)における建屋換気設備の排風機および塔槽類廃ガス処理系の排風機の一時的な監視機能の停止」と11月15日(金)に確認した「再処理事業所 高レベル廃液ガラス固化建屋(管理区域内)における塔槽類廃ガス処理系の排風機の故障」について、今般、その原因と対策を取りまとめました。
今回の一時的な監視機能の停止と排風機の故障(以下、「本トラブル」)は、ケーブルの配置変更工事(以下、「本工事」)において、制御盤の制御電源を遮断したことによって発生したものであり、今後、制御盤に接続する個別機器の工事・点検等を行う際には、原則として制御盤の制御電源は遮断しない等の再発防止対策を実施し、同様のトラブルを発生させないよう取り組んでまいります。
1. 本トラブルの概要
11月13日11時10分、本工事で制御盤の制御電源を遮断したところ、「異常」警報が発報したため、11時11分に制御電源を復旧させましたが、その間、高レベル廃液ガラス固化建屋内のB系の全排風機および建屋送風機を監視制御盤上で運転可能か確認できない状態(監視機能の停止)にあったことから、13時1分に保安上の設備に求められる状態(排風機1台が運転状態、他の排風機1台が運転可能な状態であること)を満足していないと判断しました。
11月15日、全排風機および建屋送風機を通常状態に復旧させる作業を実施したところ、塔槽類廃ガス処理設備(以下、「VOG」)の排風機の1台が回転できないことを確認したため、同日19時39分に当該排風機を故障と判断しました。
2. 原因調査結果
本工事は、安全性向上対策工事として、同一の部屋に配置されているA系、B系の排風機に係るケーブルのうちB系を異なる部屋に配置変更するものでした。本工事のケーブルの隔離(切り離し)にあたっては、他設備への影響が最小限になるよう対象のケーブルのみを切り離す方法で作業を行うべきでしたが、今回、必要な措置を講じず、制御盤の制御電源を遮断して広範囲の制御信号等を停止する隔離方法で作業したため、本トラブルが発生しました。
また、VOG排風機の故障は、制御盤の制御電源を遮断したことで、通常1台運転のところ2台同時運転となり、VOG排風機出口圧力が上昇してロータにたわみと熱膨張が生じ、ロータとサイドカバーが接触したことが原因であると推定しました。
制御盤の制御電源を遮断した経緯を調査した結果、作業計画段階および作業実施段階において、以下の5つの問題点があり、それぞれの問題点に対する原因を特定しました。
【作業計画段階における問題点】
- ①協力会社が作成した作業要領書※1には広範囲の制御信号等を停止する方法が記載されている一方、ガラス固化課の設備管理チームが作成したリスク評価表※2には他設備への影響が最小限になる方法が記載されていた。
リスク評価後に同課の工事監理チームは隔離表※3を作成する段階においても、作業要領書の隔離方法をリスク評価表に合わせて修正していなかったため、異なる2種類の隔離方法が記載された書類が存在していた。 - ②工事監理チームは、リスク評価表に記載された隔離方法を参照すべきところ、作業要領書に記載された隔離方法を参照し、隔離表を作成した。
- ③工事監理チームは、作成した隔離表を同課の設備管理チームが確認する十分な期間を確保しなかったことから、設備管理チームの確認が不十分となった。
【作業実施段階における問題点】
- ④運転部が隔離表を確認した際、広範囲の制御信号等を停止する隔離方法による設備等への影響に疑問を持ったが、工事監理チームへの確認は口頭のみだった。
- ⑤工事監理チームは、運転部からの確認に対して、問題ない旨回答した。
- 作業要領書:
保修作業、改造等に関する作業期間、作業場所、作業内容、手順等を定めたもの - リスク評価表:
原子力災害、労働災害等の防止を図るため、構造物、系統、機器および人へのリスクの評価を記載したもの - 隔離表:
保修作業、改造等が運転中の系統設備に影響を与えないよう、運転部が保修作業、改造等の範囲を区分けするための隔離境界の計画を記載したもの
以上の問題点について原因をそれぞれ調査し、以下の5つを特定しました。
【作業計画段階における原因】
- ①リスク評価後に隔離表を作成する段階においても、異なる隔離方法が記載された書類が複数存在してしまう不明確な社内ルールだった。(ルールの不明確さ)
- ②工事監理チームは、リスク評価表を参照して隔離表を作成する社内ルールを十分に理解していなかった。(ルールの理解不足)
- ③工事監理チームは、作業開始までの手続きを定めた工程を作成しなかった。(スケジュールの不明確さ)
【作業実施段階における原因】
- ④運転部は、隔離方法を確認する際のルールを理解しておらず、隔離方法のエビデンスとなる書類を確認しなかった。(ルールの理解不足)
- ⑤工事監理チームは、運転部からの確認に対して、設備への影響等を把握している設備管理チームに相談しないまま判断した。(ルールの理解不足)
3. 再発防止対策
制御盤に接続する個別機器の工事・点検等を行う際には、原則として制御盤の制御電源は遮断しないこととしました。また、原因調査で特定した5つの原因に対して、以下のとおり再発防止対策を講じます。
なお、VOG排風機の故障については、制御盤の制御電源を遮断したことが原因であり、以下の対策を講じることで再発を防止できます。
- ①社内ルールを改正し、リスク評価時に隔離表とリスク評価表を合わせた「作業票」を作成する手順に見直す。
- ②ガラス固化課は、社内ルールとその解釈に関して、教育および理解度確認を行う。
- ③ガラス固化課は、体制や役割、作業開始までの手続きを定めた工程を明確にした「個別業務計画」を作成し、管理する。
- ④運転部は、原子力安全の確保がエビデンスとなる書類を確認したうえで作業を行うこと等を社内ルールに定めた。
- ⑤ガラス固化課は、隔離方法等に関する確認を受けた際の対応方法を社内ルールに定め、周知・徹底を図ることとした。
4. 水平展開
本トラブルの内容は、2024年11月に全社へ情報共有を実施済みです。今回、特定した原因および再発防止対策についても全社に情報共有し、必要に応じて対策を講じます。
<お知らせ済み>
- 再処理事業所 高レベル廃液ガラス固化建屋(管理区域内)における建屋換気設備の排風機および塔槽類廃ガス処理系の排風機の一時的な監視機能の停止について(2024年11月14日公表)
- 再処理事業所 高レベル廃液ガラス固化建屋(管理区域内)における塔槽類廃ガス処理系の排風機の故障について(2024年11月18日公表)