日本原燃
2011年3月31日

 

定例社長記者懇談会挨拶概要



 まず、このたびの震災により、お亡くなりになられました方々のご冥福をお祈り申し上げますとともに、被災されました多くの皆さまに、心よりお見舞いを申し上げます。

 初めに、東京電力・福島第一原子力発電所の事象につきましては、我が国の原子力史上類を見ない重大な事故であり、未だに予断を許さない厳しい状況が続いておりますことを大変憂慮しているところであります。一刻も早く、安定的に炉心が冷却できる状態になり、環境への放射性物質の放出が止まることを、祈るような気持ちで見守っております。
 現在、電力業界全体としても総力を挙げて取り組んでいるところでありますが、私どもといたしましても、最大限の支援を行ってまいる所存であります。

 本日は、「地震による当社施設への影響」と「再処理工場の今後の予定」につきまして、ご説明させていただきます。
 まず、「地震発生後の当社各施設の状況および対応」につきましては、お手許の資料1をご覧ください。ポイントとなる点をご説明させていただきますと、地震発生後、直ちに私を本部長とする「全社対策本部」を立ち上げまして、現在も体制を継続させて、毎日、朝夕2回、各施設に異常がないかどうか、また、モニタリングの結果に変化がないかなどを確認しております。
 当社施設における地震による揺れは、基準地震動450ガルに対応した分離建屋地下での想定値436ガルに対して、実際は約37ガルと、想定の10分の1未満の低い値でありまして、各施設の設備も点検の結果、大きな影響はありませんでした。
 また、地震直後に商用電源(外部電源)からの電気の供給が停止し、非常用電源に切り替わりましたが、3月15日には商用電源からの供給へ復旧しております。現在は、電気の使用を少しでも抑えるために、必要なものに限って工場を運転しておりますが、安全に係る重要な機器は全て問題なく稼動しております。
 施設周辺の放射線量につきましては、地震発生の前後で変化はなく、平常の値と変わりません。なお、昨日、非常に微量のヨウ素131を検出しておりますが、当社施設からの放射性物質の放出には異常はないことから、当社起因のものではないと考えております。
 次に、「3.の当社の各施設の安全対策」につきましてご説明いたします。
 今回の福島第一原子力発電所の事象を受けまして、「使用済燃料プールで同じような事故が起こらないのか」、「外部電源が停止した時にどう対応するのか」、さらには、「想定を大きく上回る津波がきても本当に大丈夫か」といったご質問をいただいておりますので、この観点からご説明させていただきます。
 まず、再処理工場の使用済燃料プールで冷却されている使用済燃料は、原子力発電所での発電終了後、平均で13年程度経過したものが現在貯蔵されており、燃料1体あたりの発熱量は、発電直後に取り出したものに比べまして、約1000分の1程度まで低くなっております。このため、万々が一、何らかのトラブルにより、プール水の冷却ができなくなったとしても、プールの水温が急激に上昇することはありません。

 また、使用済燃料を冷やし続けるためには、プールの水をポンプで循環させるとともに、この水を冷やす必要がありますが、この冷却設備も発電所と違い空冷であります。また、この冷却設備が故障した場合でも、バックアップ設備も備わっております。さらに、プールの水が減ってきた場合でも、備えてある水槽から補給できるしくみになっております。
 また、これらの設備を稼動させるために欠かすことができない電気につきましても、仮に商用電源が止まった場合でも、非常用のディーゼル発電機により、必要な設備に電気を供給できるようになっており、さらに、この非常用ディーゼル発電機が全て使えなくなった場合でも、プールの水を冷却できるように、大型の電源車を配備したところであります。 さらに、今回、電源車を追加配備することといたしました。
 一方、冷却設備が故障したり、電源そのものを失った場合でも、燃料プールは地面とほぼ同じ高さにあることから、当社に3台ある可搬式消防ポンプと2台ある消防車のいずれかにより、三つの貯水槽から直接燃料プールに注水することができるようになっております。
 次に、再処理工場の「津波の評価」につきましては、再処理工場の敷地は、標高が約55メートル、海岸から5キロメートル以上離れており、津波により施設の安全に重大な影響を受けることはないものと評価しており、昨年12月に国からも妥当との判断をいただいております。
 ウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センター、高レベル放射性廃棄物貯蔵管理センターの各施設につきましても、それぞれ非常用電源を備えておりますが、仮に、これら施設の全ての電気の供給が途絶えたとしても、安全性に影響はありません。

 次に、お手許の資料2の「機器・設備の緊急点検および緊急時対応訓練の実施について」をご覧下さい。
 当社では、地震発生後、各施設を点検し、安全性に影響はないことを確認しておりますが、今回の福島第一原子力発電所の事象の重大性を鑑み、念のため全ての施設において、万が一、商用電源が喪失した場合に必要となる非常用ディーゼル発電機や、その設備も機能喪失した際に使用する可搬式消防ポンプ、貯水槽などの非常用の「設備や機器における緊急点検」を実施することといたしました。
 また、商用電源および非常用電源の機能喪失を想定した訓練や、電源車のつなぎ込みによる電源復旧の訓練、さらには消防車などによる使用済燃料貯蔵プールへの注水ルートの確保の訓練などの「緊急時対応訓練」を行うことといたしました。これらの点検や訓練につきましては、4月中に実施することといたしております。

 次に、お手許の資料3の「福島県での支援状況について」をご覧ください。
 当社では、3月13日から当社産業医や看護師を含めて、88名の社員を福島県に派遣しており、常時約30名体制で医療支援や、避難された方々の放射線測定や環境モニタリングなどを行っております。その他にも、東京電力本店への技術者を派遣するとともに、放射線測定器や防護服などの資機材の提供も行っているところであります。

 次に、2点目の「再処理工場の今後の予定」につきましてご説明させていただきます。
 ガラス固化設備におけるA系の温度計の溶融炉への据え付け自体は終了し、濃縮缶の復旧工事も終了して、いよいよ、「B系の事前確認試験」に向けた溶融炉の熱上げの準備を始めようとした矢先に、今回の地震が発生いたしました。したがいまして、「B系の事前確認試験」につきましては、今後の原子力の状況や、電力の需給状況を見極めたうえで、開始したいと考えております。そして、場合によっては、A系の結合装置の交換や、ボイラーなどの法定点検を前倒しで実施することも検討してまいりたいと考えております。

 最後になりますが、今回の福島第一原子力発電所の事故は、国内のみならず世界中に大きな不安を与え、原子力の信頼回復は大変厳しいものと考えております。しかし、一方で、資源の乏しい我が国にとって、エネルギーの安定確保は今後とも変わることのない大きな課題であり、原子力の必要性や原子燃料サイクルの意義は決して揺らぐものではないと考えております。そうした中で、私どもが今やるべきことは、私どもの設備を安全に管理・運営し、少しずつでも前に進めていくことだと考えております。是非、ご理解を賜りたくよろしくお願いいたします。

 
以上

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