六ヶ所再処理工場における試験の概要

 

再処理工場で行なう試験の概要

  一般に自動車工場,化学工場など大きな施設では,実際の操業を開始する前に,その製品を所定の機能通り,安定して生産できるかを確認するために「試験」を行います。この「試験」ではいろいろな種類の「試験」を少しずつ範囲を広げながら,本来の運転に近い状況で最終試験を行うという方法で進められます。とりわけ再処理工場では,ウラン試験以降放射性物質を扱うことになるため,特に安全性の確保に重点を置いて,段階的に「試験」を行います。


■試験は,本来の運転状態に「段階的」に近づけて実施

 
試験は以下のように段階的に行われます。

 

・段階的な試験実施の考え方

 いきなり使用済燃料を使ったアクティブ試験を実施すると,機器の手直しや改造が必要となった際に放射性物質を取り除く作業(除染)が必要となり,手直し改造が難しくなります。このため使い慣れている水・蒸気・空気で先ず試験を実施し,水→化学薬品→ウラン→使用済燃料の順に,より取扱いに慎重を要する試験へと段階的に行います。
 また,このように段階的に試験を行いながら,設備の操作性,保守性,安全性等を確認し,不具合があればその都度修正(改善)して次の試験へとひとつひとつ確かめながら進めていくことにしています。
 なお,ウラン試験以降の段階では,放射性物質を取り扱うため,作業員の放射線被ばく線量の管理を行うと共に,放射性物質を取り扱う区域を「管理区域」に設定して管理を強化します。

 

・試験の内容

[通水作動試験]

 水,蒸気,空気を使って以下のような機能・能力を確認します。

  • 計測設備の調整
  • 貯槽類(タンク)の液位と液量の関係を決める槽検量
  • モータやかくはん機のような機器の作動確認
  • ポンプ等の移送機器の流量等の機能・能力の確認
  • 貯槽類や各機器をつなぐ配管が正しく接続され,系統が有機的に建設されているかの確認等

 

[化学試験]

 通水作動試験で確認した系統において,再処理工場で実際に使用する硝酸,有機溶媒等の化学薬品を使用し、水だけでは確認できない事項について以下の試験を行います。

  • 薬品の密度を考慮した計測設備の再調整
  • 薬品を混合するための機器の調整
  • 試験から出る廃液を適切に処理するために廃棄物処理設備の機能・性能の確認等

 

[ウラン試験]

 実際の使用済燃料を取扱う前に極めて放射能の低い天然または劣化ウランを用いて運転することにより以下の機能・性能の確認及び調整を行います。

  • せん断,溶解,抽出及び脱硝等の各工程の機能・性能,処理能力の確認
  • 計測設備の再調整
  • 運転に必要なデータの取得
  • セルを閉鎖した後,最終的な建屋の負圧調整確認及び施設全体を統合した試験等

 

[アクティブ試験]

 原子炉から取り出された使用済燃料を用いて運転試験を行い,生産性能・安全性能が設計どおりであることを確認します。

  • 核計装設備の調整
  • 製品であるウランとプルトニウムの生産能力及び品質の確認
  • 放射性廃棄物処理施設の能力と放射性物質の環境への放出量の確認
  • 放射線遮へい性能の確認

 


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