六ヶ所再処理工場における通水作動試験の概要

 

前処理建屋の通水作動試験

■通水作動試験は,建設の進んでいる建屋から順に行うこととしており,先ず前処理建屋の通水作動試験から開始します。

(1)前処理建屋の設備概要

 前処理建屋は、再処理工場の実質的な始まりです。
 上流工程の燃料貯蔵プールから送り出された使用済燃料集合体は,燃料横転クレーンによりせん断機に1体ずつ運び込まれます。このせん断機は,使用済燃料集合体の両端末部(エンドピース)を除去し,燃料部を機械的に長さ約2〜5cmにせん断します。溶解槽では,燃料を硝酸により化学的に溶解します。燃料を溶解した溶液は,清澄機により不溶解残渣を取り除いた後,下流工程の分離建屋で溶媒抽出に適した条件とするため,計量・調整槽で硝酸を加えるなどにより溶液の酸濃度等が調整され,さらにウランやプルトニウムといった核燃料物質量が計量されて分離建屋に送液されます。この計量は,国際原子力機関(IAEA)と国の査察でチェックされます。せん断機で除去された使用済燃料集合体の両端末部(エンドピース)と溶解槽で溶け残る燃料の被覆片(ハル)は,各々エンドピース酸・水洗浄槽,ハル洗浄槽で洗浄された後,容器に入れてハル・エンドピース貯蔵工程に送られます。溶解中に発生する溶解槽廃ガスは,せん断・溶解廃ガス処理設備で処理された後,大気中に放出されます。この建屋は,以上の様な準備の処理を実施するため,“前処理“ 建屋と呼ばれます。

 

 

(2)前処理建屋の通水作動試験

 前処理建屋には,他の工程の建屋に比べてせん断機,溶解槽及び清澄機等の機械機器がたくさんあります。そのため,通水作動試験では,「ブランク試験」,「槽検量試験」,「機器単体試験」,「系統試験」及び「総合試験」に加えて,機械機器の「遠隔保守試験」を実施します。

 

1) 遠隔保守試験

 一般的に,機械は長時間使用すると摩耗や損傷するため,部品交換などの保守作業と定期的な点検作業が必要です。特に再処理工場では,これらの機械が「セル」と呼ばれるコンクリートで囲まれた部屋の内部に設置されているため,作業員による直接的な保守作業が不可能であり,遠隔操作で保守作業をする必要があります。このため,まだ放射性物質を取り扱っていない通水作動試験の段階から,セル内に設置される機器の部品交換や補修等が遠隔操作で実施可能であることを確認します。

 

遠隔保守試験 作業状況図

 セル内に設置される機器(せん断機等)の部品交換等が遠隔保守※1にて実施可能であることを確認するために実施される。

※1:遠隔保守とは?
放射性物質が存在する環境中の機器等の交換部品を離れた場所から,間接的に取扱うために,機器及び専用装置等を使用し交換(分解・点検含む)を行うこと。

 

 

2) 主要機器の試験内容(例)

 前処理建屋に設置される主要な機器の通水作動試験内容を示します。

 

<燃料横転クレーン>
 −機器単体試験
  ・インターロックの作動確認
  ・機器の作動確認
  ・運転データの取得
   (電流,荷重値,トルク値等)
 −遠隔保守試験
  ・部品の交換確認
   (モータ,位置センサー等)
 −総合試験
  ・形状模擬の燃料集合体の供給確認
   (せん断機と取合い確認)

 

<せん断機>
 −機器単体試験
  ・インターロックの作動確認
  ・機器の作動確認
  ・運転データの取得
   (圧力値,電流値,トルク値等)
 −遠隔保守試験
  ・部品の交換確認
   (せん断刃,燃料供給マガジン等)
 −総合試験
  ・形状模擬の燃料集合体の受入れ確認
   (燃料横転クレーンと取合い確認)

 

<溶解槽>
 −槽検量試験
 −機器単体試験
  ・インターロックの作動確認
  ・機器の作動確認
  ・運転データの取得
  (電流値,トルク値,作動時間等)
 −系統試験
  ・インターロックの作動確認
  ・溶液(水)の受入・排出確認
   (平均流量,送液後の残液量等の確認)
  ・系統の手動及び自動運転の確認
 −遠隔保守試験
  ・部品の交換確認(サポート・ローラ等)
 −総合試験
  ・溶解槽内の負圧確認
  ・加熱,冷却系統を含めた自動運転確認

 

<清澄機>
 −槽検量試験
 −系統試験
  ・インターロックの作動確認
  ・機器の作動確認
  ・運転データの取得
  (電流値,回転数,振動値等)
  ・溶液(水)の受入・排出試験
  ・系統の手動及び自動運転の確認
  −総合試験
  ・清澄機内の負圧確認

 


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