平成14年10月24日

報道関係各位

日本原燃株式会社

使用済燃料受入れ・貯蔵施設のPWR燃料貯蔵プールにおける
漏えい箇所再調査結果および今後の原因調査計画について

 当社は、PWR燃料貯蔵プール北壁部西側ライニング部の溶接線について、10月2日より漏えい箇所の再調査を開始し、10月21日までに一連の浸透探傷検査、真空発泡検査などを完了しました。
 調査の結果、当該プール底部溶接線において、1ケ所の貫通漏えい箇所およびこの近傍を表面研削したところ3ケ所の貫通箇所を確認しました。
 これらの調査結果および今後の原因調査計画を本日、国、青森県ならびに六ヶ所村に報告いたしましたのでお知らせします。


<別 添>
平成14年10月24日

再処理事業所 使用済燃料受入れ・貯蔵施設のPWR燃料貯蔵プール水
漏えい箇所特定再調査結果及び原因調査計画について

 

 PWR燃料貯蔵プール北壁部西側ライニング部からの漏えいにつきましては、7月23日に社外研究施設へ搬出した原因調査試験片に漏えい欠陥を確認できなかったため、当該ライニング部について、10月2日から現場の再調査を進めてまいりました。10月21日までに全溶接部の調査が完了し、床面の溶接部(熱影響部を含む)に漏えい欠陥を確認しましたので、その結果を報告します。
 また、確認した漏えい欠陥箇所は、切り出し後社外研究施設にて漏えい原因の調査を進める計画としており、原因調査計画について以下のとおり報告します。
 漏えい箇所特定再調査の実施及び今後の原因調査計画の策定にあたっては、専門家からの指導を得ながら進めました。

1.漏えい箇所特定再調査結果
 再調査は、前回調査の反省を踏まえ、検査対象面からの徹底的な水分の除去等の見直しを行った浸透探傷検査、および測定環境中のヘリウムの漏れ込みを防止するなどの改善を行ったヘリウムリーク検査を用い、添付の調査フローに従い徹底した調査を実施しました。            (添付−1参照)

(1)浸透探傷検査
 当該ライニング部溶接部を対象に貫通に至る欠陥を発見することを目的に入念な浸透探傷検査を実施した結果、252箇所の指示模様を確認しました。これらは前回調査の反省に立ち、漏えい欠陥を見落とさないように、浸透液の拭き取りを通常より若干軽くしたことで、溶接部と母材部の境界などの拭き取りにくい場所に指示模様が多数観察されたため、結果的に指示模様の数が多くなっています。
 今回の再調査では、これらの指示模様全てを対象として調査を行なうこととしました。(添付−2参照)

(2)真空発泡検査
 浸透探傷検査で指示模様が確認された箇所について、真空発泡検査を実施したところ、床面溶接部で確認した指示模様のうちの1箇所(A部)で発泡が観察され、漏えい欠陥であることを確認しました。(添付−3参照)
 その他の指示模様を確認した箇所の真空発泡検査では、発泡は確認されませんでした。

(3)表面研削後の浸透探傷検査
 浸透探傷検査において指示模様が確認されたが、真空発泡検査で発泡が確認されなかった箇所について、漏えい欠陥の詰まり除去を目的に0.2mmの表面研削を実施しました。
 表面研削が終了した箇所について浸透探傷検査を実施した結果、大部分の指示模様は消滅し、36個の指示模様を確認しました。このうち19個は表面研削後も残留した指示模様であり、17個は表面研削によって新たに観察された指示模様です。(添付−4参照)

(4)ヘリウムリーク検査
 表面研削後の浸透探傷検査で指示模様が確認された36箇所に対して、ヘリウムリーク検査を実施したところ、表面研削前の真空発泡検査で漏えい欠陥が確認された箇所(A部)から右方へ約70cm〜約90cmの間の床面溶接部付近よりヘリウムのリークを確認しました。(添付−5参照)
(当該床面溶接部の付近では、ヘリウムリーク検査のため当該箇所に装着した検査箱内の真空度が上がらなかったため、検査方法をスニッファー方法に変更し実施したところヘリウムのリークを確認しました。(添付−6参照))
 さらに、念のため表面研削後の当該箇所に真空発泡検査を適用した結果、ヘリウムのリークが確認された溶接部の約20cmの範囲内で、3箇所(B、C、D部)の発泡を確認しました。
 なお、貫通と確認された以外の33箇所の指示模様に関しては、ヘリウムのリークは確認されていないことから、貫通した欠陥でないことを確認していますが、この33箇所の指示模様に関しては今後、さらに調査を行うこととします。

(5)詳細外観観察
 真空発泡検査で発泡が確認された1箇所(A部)及びヘリウムリーク検査においてヘリウムのリークが確認された3箇所(B、C、D部)の床面溶接部に対して、マイクロスコープによる詳細観察を実施した結果、溶接部に線状の欠陥があることを確認しました。(添付−3、5参照)

 今後、引き続いて当該ライニング部の母材部分を添付−1の調査フローに従い再調査します。

2.漏えい原因調査計画について
 再調査において確認された漏えい箇所については、専門家の指導を得て以下のとおり漏えい原因調査を進めます。原因究明にあたっては、調査の結果を総合して、漏えい発生のメカニズムを解明し、今後の再発防止等の検討を進めます。

(1)漏えい箇所の現場調査
 社外研究施設で原因調査をおこなうため、試験片を切り出し前に漏えい箇所の表面を拡大観察し、表面状態の記録をとります。また、ライニング内部の欠陥の広がりを把握するため、超音波探傷検査を実施します。

(2)原因調査試験片の切り出し
 上記の超音波探傷検査結果をもとに、漏えい箇所を含めた切り出し範囲を決定した後、原因調査試験片を切り出し、社外研究施設へ搬出して原因調査を進めます。
 切り出しにあたっては、歪みゲージを設置するなど、原因調査の一環として当該部の応力状態を評価します。
 また、切り出し後、社外研究施設へ搬出前に現場において放射線透過検査を実施し、原因調査試験片の内部状態を把握します。

(3)社外研究施設での調査
 社外研究施設においては、走査型電子顕微鏡観察により得られる漏えい箇所の表面の状態や放射線透過検査等により得られる漏えい欠陥の広がりの状態を考慮した上で原因調査試験片を切断して調査用サンプルを作成し、以下の調査を進め漏えい原因を究明します。

(1)漏えい欠陥部の形態観察
 光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡により、漏えい欠陥部の形態や金属組織の状態を調査します。

(2)漏えい欠陥部の元素分析
 エックス線分析装置により、漏えい欠陥部の腐食生成物及び不純物の有無を調査します。
 また、欠陥部裏面の塩素付着状況の調査を実施します。

(3)漏えい欠陥部の硬さ測定
 硬度計により、漏えい欠陥部及びその近傍の硬さ測定を実施し、硬さ分布を調査します。

(4)材料成分分析
 漏えい欠陥近傍の溶接金属を化学分析し、材料成分の異常の有無を調査します。


3.その他(微生物腐食に係る対策)
 前回の調査で切り出した原因調査試験片に確認された微細な穴状模様の発生原因は、微生物腐食によるものであったことが判明しています。微生物腐食の対策に関しては、先ず、PWR燃料貯蔵プールの残水に適用し、この結果を踏まえ、BWR燃料貯蔵プール及びBWR/PWR燃料貯蔵プールに対する適用性の検討を進めることとしています。

(1)殺菌方法の検討結果
 実プール水を使用した殺菌効果試験等、微生物腐食抑制対策としては、20ppm以上の過酸化水素の注入が効果的であるとの評価結果を得たことから、目標を20ppmとし注入を行います。

(2)殺菌対策の進め方
 漏えいのあったPWR燃料貯蔵プールでは放射性物質の飛散防止等の観点から、漏水調査対象の壁および床面部を除き床面より約10cmプール水を残しており、この残留水は滞留しており、微生物の繁殖しやすい環境にあることから、当該プールの残水へ過酸化水素を注入します。
 注入後は、定期的にサンプリングをして水質及び殺菌効果を確認するとともに、ステンレスの試験片を浸漬させ、定期的に目視により表面状況を確認します。
 上記結果を踏まえ、BWR燃料貯蔵プール及びBWR/PWR燃料貯蔵プールへの適用性を検討します。








 

以  上


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