JAPAN NUCLEAR FUEL LIMITED

平成14年3月27日

報道関係各位

 

日本原燃株式会社

 

ウラン濃縮事業における遠心機分解調査及び新型遠心機開発について

 
 

 当社は、現在計画停止中のRE-1A(平成3年度運転開始分)の分解調査結果並びに新型遠心機(2010年頃に導入予定)の開発状況を別添のとおり取りまとめましたので、お知らせいたします。


添付資料

I 遠心機の分解調査結果

1.はじめに
 現在計画停止中のRE-1A(平成3年度運転開始分)の遠心機について分解調査を行うことにより停止原因を究明するとともに、この結果をもとに、既設遠心機の運転見通し及び新型遠心機への反映等について検討を行った。

2.調査内容
 遠心機31台について分解し、組立状況及びウラン化合物の付着状況の確認、部品等の分析等を行った。
 また、分解調査に加え遠心機の製造履歴調査等を行い、更に、遠心機製造における主要工程の一部を模擬した確認試験等を行い、遠心機停止原因を究明した。

3.調査結果[図1]
(1)分解調査結果
(1)ウラン化合物は、回転胴内の底部部品に多く生じる傾向があるが、付着量が少ないにもかかわらず早期に停止した遠心機がある。

(2)早期に停止した遠心機の回転胴底部部品では、局所的に直線状のウラン化合物が付着(付着列)しており、この付着列が回転胴のアンバランスに大きく影響している。

(3)回転胴底部部品の付着列は、製造段階における微細な研磨跡(線状痕)の上に生じていた。この線状痕は調査した全ての遠心機に見られ、早期停止した遠心機では付着列が多いことが確認された。

(2)製造履歴調査結果
(1)製造要領を調査した結果、RE-1Aの製造開始時からRE-1B(平成4年度運転開始分)の製造途中までの間の回転胴底部部品製造段階での洗浄方法がそれまでの方法から変更されており、この間(RE-1AからRE-1Bの製造途中まで)の遠心機停止率が高いことが確認された。

(2)保護被膜の製造単位(同時に処理したもの)毎の遠心機停止発生傾向について統計的に評価した結果、保護被膜の処理時間が比較的短いものに、早期に停止した遠心機が集中する傾向が確認された。

(3)確認試験結果
(1)RE-1Aと同一の製造法で金属加工を行った結果、金属表面には線状痕が生じ、潤滑剤成分が線状痕内に残留することが確認された。

(2)保管中の回転胴底部部品素材の分析を行った結果、RE-1A素材の線状痕から潤滑剤の成分が検出されたが、RE-1B後半分の素材からは潤滑材の成分が検出されなかったことから、RE-1AからRE-1B前半分までの洗浄方法は洗浄効果が低かったことが確認された。

(3)RE-1A素材を用いて保護被膜処理を行った結果、処理時間が長い場合は線状痕内の残渣が取り除かれることが確認された。また、処理時間が短い場合は、線状痕内に残留した潤滑剤成分の影響により保護被膜が十分に形成されないことが確認された。

(4)遠心機停止原因
 以上の調査結果から、遠心機の停止原因は、回転胴底部部品におけるウラン化合物の付着、剥離によるものであり、運転時間に応じて徐々に回転胴にアンバランスを生じることにより遠心機が停止に至ったことが確認された。
 また、RE-1A、1Bに見られた遠心機早期停止の原因は、以下のプロセスによるものと推定される。

(早期停止プロセス)
(1)部品の製造時に洗浄効果が弱い場合、素材研磨工程で生じる線状痕内に潤滑剤成分が残留するため、線状痕部分には保護被膜が十分に形成されない。

(2)保護被膜形成時の処理時間が比較的長い場合は、処理途中で潤滑剤成分が取り除かれ、線状痕部分にも健全な保護被膜が形成される。

(3)保護被膜が十分でない線状痕部分は、ウランとの反応抑制効果が低いため、ウラン化合物の付着を生じ易く、この付着列が回転胴のアンバランスを加速させ、早期停止に至る。
 
 なお、再起動回数と遠心機停止との因果関係については、今回の調査結果からは明確にはならなかったが、その影響は少ないと考えられる。

4.既設遠心機への反映
(1)現状の運転見通し
 RE-1Bの製造途中以降の遠心機については、洗浄方法変更により結果的に洗浄効果が向上しており、洗浄に起因する早期停止は発生せず、長期的に運転を継続できるものと考えられる。
 
(2)運転長期化方策の検討
 ウラン化合物と反応性のある除去ガスを用いて付着物を除去することにより回転胴のアンバランスを改善し、遠心機の運転期間を長期化する方策の適用可能性について試験研究を進める。
 
5.新型遠心機への反映
 新型遠心機は、設計仕様や使用材料が既設の遠心機と大きく異なるため、ウラン化合物の付着は大幅に抑制されると考えられるが、共通するものについては今回の分解調査結果を踏まえ以下の反映を行う。

(1)十分な洗浄条件を確立するとともに、保護被膜の製造時における最適な処理条件の把握等により、付着抑制の向上を図る。

(2)製造要領の変更に際して、ウランとの反応性等の長期信頼性についての評価を十分に行い、品質の維持を図る。

(3)回転のアンバランスが発生した際の耐力を向上させた軸受を開発する。


II 新型遠心機開発の成果と今後の計画

 これまでの新型遠心機開発では、大きな技術的課題を発生することなく順調に進捗しており、現在までの開発成果は、概念仕様を決定するための目標とする水準に到達していることから、次期開発ステップに進む状況と評価している。そこで、平成13年度末での開発成果を踏まえた具体的な進捗状況を報告する。

 この新型遠心機は、これまでの開発路線を数段ステップアップして、世界の遠心機技術をリードする"世界最高水準の遠心分離機"を開発する事を目標としている。
 事業化スケジュールとしては、新型遠心機による役務生産を2010年(平成22年)頃を目途に開始し、10年程度をかけて1500tSWU/y規模を達成するものであり、当初設定した事業目標にしたがって着実に開発を進めている。[表1]

表1 新型遠心機開発工程

1.開発目標について
 開発目標として最終的に国際役務価格並を目指し、回転胴直径、周速、回転胴長さを決定し、経済性の重要ファクターである目標分離性能は金属胴遠心機の4〜5倍、目標寿命としては金属胴遠心機以上を見込めることを確認している。[表2(a)]

2.開発計画に基づく進捗状況について
(1)開発体制
 核燃料サイクル開発機構(以下「サイクル機構」という)、原燃マシナリー葛yび当社の優秀な人材を平成12年11月に発足した当社ウラン濃縮技術開発センターに糾合し、熱意をもって目標達成のため開発に励んでいる。
 さらに、本年4月からは地域的にも六ヶ所村に集結し、一層の効率化を図ることとしている。

(2)開発計画の評価
 開発方針の立案及び概念仕様決定などの技術評価について、外部有識者で構成する「ウラン濃縮技術評価委員会」にて評価を頂きながら開発を進めている。

(3)実用化に向けた主要開発計画の進捗状況
(1)分離流動性
 サイクル機構にて新型遠心機の原型である先導機開発において単機性能の確認がなされているが、平成13年度末までに計画どおり、カスケードを組むために最低限必要な条件(圧力、流量、回転胴内の圧力)の設定を行っており、目標分離性能の評価として金属胴遠心機の4〜5倍となることを確認している。[表2(e)(f)]

(2)回転性
 回転胴のバランシングを量産に適用できる作業期間まで短縮するために軸受耐力向上試験などを実施する計画としており、平成13年度末までにバランシング作業期間は量産時の目標を達成する見通しが得られており、さらに耐力向上を図った軸受を開発していることなど、質的に当初計画以上の成果が得られている。

(3)安全性
 耐震性及び回転胴が破壊した場合にケーシングの支持構造体を通じて衝撃が波及しない構造の設計実証を行う開発全体計画の内、平成13年度は、計画どおりケーシング支持構造等の概念設計、ガス粉塵遮断方式の選定及び試験実施の初期設定として必要な商用プラントでの遠心機据付方式の概念検討を実施し、今後の開発条件を整備した。[表2(b)(d)]

(4)長期信頼性
 長期信頼性の面で重要な回転胴底部部品について、耐遅れ破壊性を有することを確認するとともに、量産に対応した製造方法の見通しを得た。また、総合的長期信頼性試験を実施するための環境整備を完了した。
 更に、RE−1A遠心機分解調査結果から、十分な洗浄条件を確立し保護被膜製造時における最適な処理条件を把握し適用することにより付着抑制の向上が図られ、合せて耐力を向上した軸受の開発により長期信頼性の見通しが得られた。
 また、ウラン化合物が付着しにくい材料選定等の構造設計を行っている観点からは、目標寿命として金属胴遠心機以上を見込めると評価している。

(5)カスケード試験
 遠心機特性をカスケード編成法から評価し、プラント用遠心機特性の方向性を設定した。
 また、定格運転制御に関する新たな手法を開発中である。
 100台規模のカスケード試験内容を「カスケード設計法の確立」と「運転単位としての成立性、運転特性、信頼性の検証」を目的とする2つのカスケードに分離し開発の実証を加速することについては検討を継続している。

(4)生産体制(実用化に向け、開発目標を達成する量産体制)
 新型遠心機は、生産量が減少することから、特殊部品(回転胴、下部軸受、回転胴底部部品など)については、当初方針に従い、製造を専門メーカに特化して開発を実施している。
 更に、遠心分離機の機能開発ならびに製造技術開発と連携した製造体制の検討を計画している。

(5)代替技術について
 代替技術については、技術的可能性、困難度、代替技術としての成立性について計画に沿った評価を行い、回転胴底部部品構造、ガス抜出機構、回転胴成形技術について、採用技術の早期絞り込みを行い、開発資源を投入すべき開発仕様を一本化した。
 なお、代替技術については、これまでの開発成果を取りまとめ、今後の活用が可能なものとしている。[表2(c)]

3.平成14年度以降の開発計画
 平成13年度までの開発状況としては計画どおり進捗しており、これまでの成果を引継ぎ、平成14年度からは当初計画どおりにプラント遠心機開発段階に移行する。

表2 概念仕様決定のための評価項目と課題

 

以 上

 

 

 

 


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