平成22年9月10日


社長記者会見挨拶概要

 本日は、当社「再処理施設の工事計画の変更」と「財務基盤強化策」につきまして、ご報告させていただきます。
 昨日夕刻に開催いたしました当社取締役会におきまして、再処理工場のしゅん工時期をこれまでの「本年10月」から「2012年10月」へ変更することを決定し、本日、経済産業大臣へ工事計画の変更の届出を行うとともに、先程、青森県知事、六ヶ所村長にご報告いたしました。
 それでは、工程変更の内容につきましてご説明させていただきます。お手許の資料(参考資料)、『「再処理施設の工事計画」の変更に関わる今後の作業内容について』の上段をご覧下さい。
 今回の工程の見直しにあたりましては、2つの柱を基本的な考え方として検討を行いました。
 まず第一は、これは当然のことではありますが、「アクティブ試験については、安全を最優先し、慎重に進める」こととしたこと、そして第二として、「アクティブ試験を確実に成功させるために、4つの方策に取り組む」ことといたしました。
 方策の一つ目は、「ガラス溶融炉の温度管理を確実なものとするため、温度計の追加設置工事などの必要な設備改善を行う」ということであります。
 これは、下の表の「主な作業」で言いますと、①と④のB系ならびにA系の溶融炉に温度計を追加設置する工事のことであります。一昨年10月のガラス固化試験における流下不調の原因を究明し、7月に「運転方法の改善検討結果報告書」として取りまとめご報告いたしましたが、7ヶ月にわたるKMOC試験結果から、今後の安定運転をより確実に行うため、ガラス温度の測定点を増やすなどの工事を行うものであります。
 この温度計の追加設置工事につきましては、相当の期間を要しますが、アクティブ試験、更には操業後の安定運転のためには、この時期に実施することが必要とし、現在、国へ設工認申請を行っているところであります。また、加えて、流下ノズルの加熱性確保のため、A系につきましては、結合装置の交換も行います。
 二つ目は、「ガラス固化試験にあたりまして、KMOCと実機の比較検証を実施し、段階的にデータを確認しながら慎重に進める」ことであります。
 工程表では、②と⑤、そして⑥と⑦でありますが、KMOCで得られた試験結果を実機に適切に反映させるため、まず、B系からKMOCで使用した模擬廃液を実機に入れ、しっかりと検証し、確認する「事前確認試験」をA系、B系ともに実施しまして、データを一つひとつ確認し、段階的にガラス固化試験を進めることといたしました。そして、その後、A系・B系の両系統で実廃液を用いて、安定運転および性能の最終確認のための試験を行います。
 このように、ガラス固化試験につきましては、多少時間はかかりますが、確実にデータをとり、一つひとつ確認しながら慎重に進めることといたしました。
 三つ目は、「これまでの現場経験を踏まえて確実に実行できる作業計画と、裕度を持たせた全体工程を策定する」としたことであります。
 これは、すべての作業に関係することですが、固化セル内は遠隔作業となることから、作業に使用するパワーマニピュレータやITVカメラなどの機器の点検や補修などにつきましては、これまでの現場における経験を踏まえて作業計画を立てるとともに、全体工程に裕度を持たせました。
 四つ目は、「安定運転に万全を期すため、固化セル内の機器の点検を継続して実施する」ことであります。
 工程表では①と④のセル内機器点検でありますが、既に、高レベル廃液漏えいに伴う硝酸の影響を受けた可能性のある218機器については、一度点検を行っておりますが、今後のアクティブ試験を確実に行うため、再度点検を行うこととしました。なお、セル内機器点検と温度計の追加設置工事については、並行して作業を行うこととしております。
 これらを踏まえ、下の表の今後の作業工程をご覧いただきたいと思いますが、一つの里程標として、2011年度内を目途に、まず始めに①「B系のガラス溶融炉への温度計の追加設置工事」を行います。そして、現在、原因究明を行っております分離建屋における高レベル廃液濃縮缶の温度計保護管内への廃液の漏えい対策を講じるとともに、並行して「セル内機器点検」を行います。
 次に、②「B系のガラス溶融炉で事前確認試験」を行い、引き続き③「A系の炉内残留物の除去」を行います。残留物は前回と同様の十数kgであることが確認されておりますが、作業にあたっては事前に訓練を徹底して行うこととし、除去後は炉内観察を行います。次に、A系においてもB系と同様に、④「温度計の追加設置工事」と、結合装置を取り替える工事を実施し、「セル内機器点検」を行った後、⑤「A系のガラス溶融炉での事前確認試験」を行います。
 ここまでが、ひとつの大きな括りでして、使用前検査受検のための最後のガラス固化試験に向けての準備工程という位置づけであります。
 そして、2012年10月までに、最後のガラス固化試験を実施します。⑥と⑦ですが、この試験では、まずB系で実廃液を用いて安定運転と性能の確認を行い、使用前検査を受検します。さらに、A系においても同様の試験を行い、使用前検査を受検し、しゅん工を目指してまいりたいと考えております。
 結果として、2年という大幅な工程変更となりますが、これは、これまでの固化セル内の機器の点検や、KMOCを使っての検証により、今後、取り組むべきことがはっきりと分かってきたこと、そして、そのためには多少時間がかかってもしっかりと取り組むこととした結果であります。
 先程、三村知事からは、「スケジュールありきではなく、安全の確保を第一義に、当面する課題を一つひとつ解決し、しっかりとした安定運転の実現を」というお言葉をいただきました。
 私どもといたしましても、安全は全てに優先するものと考えており、「工程の見直しにあたっての基本的な考え方」の第一に掲げまして、一つひとつの作業や試験を、慎重、かつ、確実に進めてまいる所存であります。
 また、ご要請のありました、今回の工程変更に関する県議会の皆さまへのご説明につきましては、工程変更の基本的な考え方や具体的な作業内容につきまして、丁寧にご説明させていただきたいと考えております。なお、「ガラス溶融炉の運転方法」の報告書につきましても、国からご評価をいただいた後に、改めてご報告させていただきたいと考えております。
 今回の工程変更により、県民の皆さまには大変ご心配をおかけすることになりましたが、2012年10月を目指して、不退転の決意で、全力で取り組んでまいる所存であります。

 最後に、当社の「財務基盤強化策」についてご報告いたします。
 昨日の取締役会において、第三者割当の募集株式発行による4,000億円の増資を提案することを決定いたしました。
 これは、しゅん工後の本格操業に向け、製品の貯蔵建屋や、廃棄物の処理建屋・貯蔵建屋などの増設に取り組んでいく必要があること、また、再処理以外の事業でも、MOX燃料工場の建設、ウラン濃縮事業における新型遠心機の導入、更には、先般、県ならびに六ヶ所村からご了解をいただきました海外からの返還低レベル廃棄物の受入れのための貯蔵建屋の建設など、各事業の進捗に伴って設備投資が必要となり、そのためには多額の資金が必要となってまいります。その資金を中長期に安定かつ円滑に調達するため、増資により財務基盤を強化することにいたした次第であります。
 この増資による資金は、今申し上げました通り、今後建設予定であります新規設備のための資金に順次充当するものであります。正式な手続きは、今月22日の株主総会後となりますが、増資の引き受け先は、お手元の資料のとおり、原子力発電所を運転しております10電力会社を中心にお願いしているところであります。
 すなわち、今回の4,000億円という大規模な増資は、知事にもご報告をいたしましたが、ここ青森において再処理を始めとする原子燃料サイクル事業に対して、不退転の決意で取り組む当社を、全電力をあげてサポートする姿勢を示すものと考えております。

以上