2012年4月26日

定例社長記者懇談会挨拶概要

 はじめに、「ガラス溶融炉B系列における流下性回復に向けた作業の状況」についてご説明します。
 既にお知らせしておりますが、今月6日から9日にかけて炉内にカメラを入れて観察した結果、残留物はほとんどなく、ハツリ作業を行う必要はないことを確認いたしております。
 また、炉内レンガの状況については、窯業などのレンガ炉と同様、通常の運転時に発生するヒビや欠けはありましたが、大きな損傷はなく、溶融炉の健全性には問題がないことを確認いたしております。
 流下性が低下した原因については、炉内観察の結果を踏まえ、現在、評価を行っているところです。これまで申し上げたとおり、流下ノズル部から採取したサンプルの分析結果からは、炉内のガラスと接しているレンガの小さい欠けと推定しており、これに過去の運転状況なども踏まえて検証を進めております。いずれにいたしましても、まとまり次第お知らせしたいと考えております。
 一方、濃縮缶や蒸発缶などに関わる圧力容器の法定点検については、先週20日までに終了し、安全蒸気ボイラの点検についても、4月中には終了する予定であります。
 事前確認試験については、原因をしっかりと評価するとともに、溶融炉周辺の機器や設備の再点検をいま一度しっかりと行った後に実施したいと考えております。5月中旬頃に溶融炉の熱上げを実施できればと考えているところであります。いずれにいたしましても、安全を最優先に慎重に作業を進めてまいります。

 次に、昨年11月に国から指示のありました「東京電力福島第一原子力発電所における事故を踏まえた核燃料サイクル施設の安全性に関する総合的評価」、いわゆるストレステストについてですが、現在、最終的な取りまとめを行っているところであり、明日、国へご報告するとともに、皆さまにもご説明したいと考えております。
 具体的には、再処理施設、これはアクティブ試験期間中のもので、廃棄物管理施設、ウラン濃縮工場、低レベル放射性廃棄物埋設センターの4施設について報告する予定であります。
 特に、再処理施設では「設計上の想定を超える事象」に対し、施設がどの程度まで耐えられるのかの評価や、そういった事象の発生および更なる進展の防止のための措置、いわゆるアクシデントマネージメントの検討などを実施いたしております。詳細は、明日ご説明いたしますのでよろしくお願いいたします。

 最後になりますが、今月に入り、原子燃料サイクル政策の選択肢の評価を巡る議論が本格化いたしておりますので、一言申し上げたいと思います。
 先週19日に開催されました原子力委員会の技術等検討小委員会では、今後のサイクル政策に関する3つのシナリオのコストの試算結果が原子力発電電力量の比率ごとに - つまり、 2030年までに原子力比率35%、20%、そして、2020年までに原子力比率0%ごとに - それぞれ示されました。
 このような数値を試算して比較検討する際に大事なことは、実際にコストを負担されることになる国民の皆さまの立場に立って考えることと思います。
 例えば、原子力比率を0%とした場合、原子力発電電力量が少なくなった場合の代替発電コストについても、しっかり検討した上で議論していただくべきであり、それが国民の皆さまにとって適切な判断につながるものと考えております。
 ちなみに、平成16年の策定会議では、代替火力発電コストに加えましてCO2対策コストについても算定されていますし、19日の小委員会でも、使用済燃料が青森から発電所へ返送された場合に懸念される影響として、2013年から2030年までに失われる原子力発電電力量が算定されています。
 次回の小委員会では、それに伴うコストも参考としてお示しいただけるようですが、政策変更に伴う様々なコストをしっかりと踏まえた上で議論していただきたいと思います。
 と同時に、今回のコスト評価は、原子燃料サイクル政策の選択肢を検討する際のあくまで1つの要素と考えております。
 ご案内の通り、このところ中東情勢の緊迫化に伴い原油価格が高騰しております。我が国は原油の8割以上、LNGの約2割を中東地域に依存しており、こうした我が国の脆弱なエネルギー供給構造を考えますと、「エネルギー安全保障」の観点からも、原子力は一定の割合で必要であり、さらにはエネルギー資源を有効活用する原子燃料サイクルの意義も大きいものと考えております。
 また、繰り返し申し上げておりますが、これまで長きにわたり国のエネルギー政策に協力してこられた青森県民の皆さまの思いや、地元の信頼を失うことになった場合の多大な影響など、決してコストだけでは評価できない面も踏まえて検討していただきたいと思います。是非、現実を踏まえた冷静な議論をお願いしたいと思います。