日本原燃
2011年5月31日

 

定例社長記者懇談会挨拶概要



 まず始めに、「再処理施設の緊急安全対策」に関する報告書につきましてご説明させていただきます。
 昨日、再処理施設の全交流電源喪失時における緊急安全対策について取りまとめ、国へ報告いたしました。その内容につきましては、昨日、皆様にもご説明したとおりでありますが、今回、検討にあたって、私どもが最も重視したことは、「まずは、起こり得ないだろう」ではなく、「起こると考え、そうした時にどうするのか」という視点から、もう一度確認を行ったことであります。これまでも万が一のことを考え、非常用ディーゼル発電機を多重化するなど、様々な対策を講じてまいりましたが、さらに、非常用ディーゼルが全て使えなくなった時の対応などを、現実のものとして考えていくことといたしました。
 例えば、「電源車は1台で大丈夫か。複数台あった方がいいのではないか。また、電源車の繋ぎ込みにはどのぐらいの時間がかかるか。さらには、この電源車は大きな地震で構内の道路が損傷した場合、本当に走れるのか。」といったように、緊急時を想定した具体的な課題について、一つ一つ詰めていくとともに、安全対策のさらなる拡充を目的とした長期的な対策の検討も行いました。そして、今すぐやっていくこと、多少時間はかかってもしっかりやっていくことを明確にして、確実に取り組んでいくこととした次第であります。
 取り組みの一例をご紹介いたしますと、地震により再処理施設内の路面が大きく損傷し、電源車が電力の供給先であります非常用電源建屋までの走行が困難な場合もあるとして、あらかじめ燃料タンクの近傍から非常用電源建屋まで、約500メートルにわたって電源ケーブルの敷設を行うこととし、この工事につきましては先週25日に完了しております。また、高レベル廃液等の貯槽内に圧縮空気を送り、水素の滞留を防止するためのコンプレッサー3台、これは1台で十分機能は維持できる訳でありますが、全て停止した場合でも、水素滞留防止機能を維持するために、エンジン付きのコンプレッサーを新たに設置することとし、これも先日発注をいたしまして、6月中には配備することといたしました。
 今後は、お示しした緊急安全対策につきまして、国に確認・ご評価いただくとともに、私どもといたしましては、最優先で取り組んでまいる所存であります。

 次に、4月28日に国から、「東北地方太平洋沖地震で大きな地殻変動が観測されたことを踏まえ、当社において既に調査を行っている断層について、耐震設計上考慮する必要があるかどうか、もう一度検討するため、必要な情報を報告するように」との指示があり、本日午後、国に報告する予定であります。
 具体的な内容につきましては、国への報告後、皆様にもご説明させていただきますが、既に国から妥当であるとの評価をいただいております耐震バックチェックの耐震安全性評価報告書から、耐震設計上考慮しなくていいと評価した断層を整理し、取りまとめて報告する予定であります。

 次に、「再処理工場の現状」につきましてご説明いたします。
 これまでに、クレーンの点検や固化セル内の整理を行うとともに、本日からはA系の結合装置の交換作業を開始いたしております。6月中には交換が終了する予定でありますので、これによりまして、A系・B系とも、事前確認試験までに予定しておりました設備改善工事は全て終了することになります。なお、今後は安全蒸気ボイラなどの法定点検を行うこととしております。今後とも安全を最優先に、一つ一つ着実に取り組んでまいる所存であります。

 最後に、「福島への支援」につきましてご説明いたします。
 当社では、これまで社員を福島県に派遣し、スクリーニングや環境モニタリングなどを行っているところであります。また、福島第一原子力発電所のタービン建屋における滞留水の分析につきましても、これまで2回、再処理工場内に持ち込み分析を行ってまいりました。
 さらに、お手許の資料、「福島第一原子力発電所の高レベル滞留水処理に対する技術支援について」をご覧いただきたいと思いますが、先般、東京電力から当社に高レベル滞留水の処理に対する技術支援の要請がありました。当社といたしましても、これまでの再処理工場における試運転の経験と知見等を活かし、支援を行っていくことといたしました。
 滞留水の処理とは、資料の「滞留水の処理プロセス」にありますように、福島第一原子力発電所1〜3号機のタービン建屋から集中廃棄物処理建屋に移送されました高レベル滞留水について、まず、油分を除去し、次に、ゼオライトによる吸着、そして凝集沈殿などによって放射性物質を除去、さらに滞留水には海水が混じっていることから、塩分を除去するための淡水化を行い、原子炉の冷却水として再利用するというものであります。
 現在、東京電力のもとで、国内外の企業が役割を分担して、滞留水の処理設備の設計・製作・設置・運転準備を行っており、当社は、このプロセス全体について技術支援を行うこととしております。具体的には、処理設備の計画から運転安定期まで、施設の計画や設計に対する技術評価、試運転や運転に関する計画および運転要領の検討評価、そして運転結果の評価、さらにはトラブル対応方策の検討を行うものであります。また、安定運転以降は、現場の状況に応じて、運転パラメータの評価などを行っていく予定であります。現在は、6月中旬の処理開始に向けて、慎重に取り組んでいるところであります。
 支援体制につきましては、再処理工場の試運転経験者を中心に、約30名体制で福島・東京・六ヶ所にチームをすでに設置しており、5月23日から福島チーム11名が、現地における試運転のための支援活動を始めたところであります。
 現在、東京電力では、原子炉の冷温停止に向けて懸命に取り組んでいるところでありますので、当社といたしましても、特に今回のような再処理の工程にもある化学処理の分野など、当社が得意とする分野で、最大限の支援を行ってまいりたいと考えております。

 
以上

INDEX 一覧へ