日本原燃
2007年12月25日

 

定例社長記者懇談会挨拶概要



 はじめに、この1年を簡単に振り返りたいと思います。
 今年は昨年に続き、中国やインドなどの旺盛な経済発展と、京都議定書の約束期間入りを目前とした地球環境問題への国際的関心の高まり、さらには複雑化する国際情勢の中で、原油価格が高騰し、バーレルあたり約百ドルという史上最高値を記録しました。
   結果として、灯油、ガソリンをはじめ、青森を代表する水産業を支える漁船用燃料のA重油などが高騰した他、バイオエタノールの生産拡大といった動きもあり、畜産業に欠かせない配合飼料、小麦・大豆・コーヒー・マヨネーズなどの食品が軒並み値上がりし、県内の経済や市民生活にも大きな影響が広がりました。
 価格高騰は非化石燃料も例外ではありませんでした。世界的な原子力ルネッサンスともいうべき、今日の原子力推進の大きな流れの中で、原子燃料となるウランの需給がタイトになり、国際価格がポンドあたり百ドルを初めて超えるほどに高騰しました。結果として、ウラン資源を今後、いかに有効に、うまく使っていくか、ということが内外の大きな課題となりました。
 このような世界的規模での大きな変化の中で、今年4月に、原産年次大会が青森市で開催され、約20の国・地域から集まった専門家約1,500名によって熱い議論が繰り広げられたことは、非常にタイムリーであり意義深いものであった、と改めて感じています。同時に、ウラン資源の有効利用を図り、化石燃料の節約、地球環境保全につながるサイクル事業を預かる私どもとして、身の引き締まる思いを感じつつ、自らの使命を果たすことに決意を新たにしました。
 10月に当社がアレバ社との間で、原子燃料リサイクルの平和利用分野における協力関係を拡大・強化するための包括的提携契約を締結しましたことも、こうした想いからです。
 世界最新鋭のプラントである六ヶ所再処理工場と仏・ラア−グ再処理工場とを「姉妹プラント」として連携強化を図り、両工場の産業的な優位性を高めるとともに、エネルギー資源確保と地球環境保全に資するGNEPなど、原子燃料リサイクルの平和利用での協力関係を拡大し、そこで培った安全技術・安全文化を六ヶ所再処理工場に反映することを目指しました。

 次に、各事業の今年1年を振り返ります。
 まず再処理事業ですが、1月末からアクティブ試験の第3ステップの試験を開始し、連続的な試験・運転による工場全体の運営という流れの中で、一段と高い技術の修得を図りました。
 しかし、4月に過去の耐震データ入力誤りが判明し、その対応に4カ月余りを費やしたため、第4ステップの試験開始が当初の計画から約4カ月遅れの8月末となりました。そして、再処理工場のしゅん工時期も「平成19年11月」から「平成20年2月」に変更しましたが、第3、第4ステップを通じての大きな収穫は、世界トップレベルのせん断性能と、それに伴う再処理能力を発揮できることを確認できたことです。
 その後もいくつかの事象を経験しながら、ひとつ一つ丁寧な対応と再発防止に努めました。そして、『最後の大きな山場』 と考えていたガラス固化体製造については、容器への注入・充填を11月5日から開始しました。
 さらに、今後の試験、性能運転を円滑に、継続的に進めるために、必要な廃液を準備することを目的として12月17日からBWR燃料のせん断を開始しました。
 現在、ガラス溶融炉において、1体ずつ慎重に注入・充填を行いながら、運転技術について一層の習熟・経験を積み、追加的なデータの取得を行っています。そして、この運転実績をもとに、溶融炉について安定した運転状態を維持する勘所を確認しています。
 これからの詰めが特に大事であると考えており、安全を第一とし、協力会社も含め全員で力を合わせて、慎重に、最後のゴールを目指します。

 次に、今年7月に発生した新潟県中越沖地震も大きな問題でした。震源の約16キロ南に、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所があり、4基の原子炉が運転中あるいは起動中でしたが、いずれも地震発生と同時に、原子炉が自動停止しました。すなわち「万一の時に原子炉を即座に止めて、安全をしっかり守る」という、原子力発電所の一番大切な機能が、しっかり作動したということは、評価されてもいいのではないかと思います。
 私どもとしては、中越沖地震から得られるもの、学ぶべきものは、しっかりと学びたいと考えております。さる11月2日にご報告させていただいた「新耐震指針に照らした耐震安全性の評価」、いわゆる耐震バックチェックについても「新耐震指針に基づき、基準地震動を策定、その地震が発生した場合でも、国に認可をいただいて設置した安全上重要な施設の耐震安全性がしっかりと確保されていることを、中越沖地震の知見も織り込んで確認した」ということです。

 次に、ウラン濃縮事業についてですが、4月から新型遠心機のカスケード試験を開始したことが何よりも明るい話題です。当社は、2000年度から国内の技術者を結集し「国際的に見て遜色のない経済性と性能の実現」を目指し、既設に比べて4〜5倍程度の高い性能を持つ遠心機の開発に取り組んできましたが、この4月からは、当社の六ヶ所サイト内の研究開発棟において、複数の新型遠心機を組み合わせた設備を用い、まずはウランを使用しない状態で、圧力の変化などを確認し、起動のための条件設定などを確認する試験を重ねました。そして、この11月からは、カスケ−ド試験設備で初めてウランを使用した試験を開始しました。ウランの使用量を徐々に増やし、現在ではウランの量を一定にした状態で、カスケード試験設備全体での運転特性や分離性能などの確認を行っています。これまでのところ、暫定的な評価ですが、所定の目標をほぼ満足できる見通しです。すなわち、それは海外の先行メ−カーにも決して引けを取らない性能を持っていると評価できるということです。
 今後は、定格運転状態で連続運転を維持し、カスケ−ドの制御性を確認するための各種試験を行うことを計画しており、その上で、2010年度頃からの新型遠心機の導入開始と、1,500トンSWU/年規模の生産体制の実現を目指します。

 なお、来年はいよいよ本格操業に入ることから、地元企業の皆さまに再処理工場のメンテナンス業務などに参入いただくため、3月に「予備品倉庫見学会」を開催しました。「どんな資材・部品が求められているのか」などを身近にご覧いただき、細部にわたるご相談を承りました。
 お蔭さまで、これを契機とし、現在、県内企業の17社がビジネス参入に向けて意欲を燃やし、試作品の製作にトライしています。こうした活動が実際のビジネスとして実を結び、地域との共生、地元企業とのwin-winの関係づくりにつながることを心から願っています。

 いずれにいたしましても、当社事業は、再処理事業、濃縮事業、埋設事業、MOX燃料加工事業ともに、近年、国際的な注目を浴びており、海外からも多くのお客さまを迎えています。今後も、安全を最優先に、しっかりとそれぞれの事業に取り組み、経験・ノウハウを積み重ね、この青森の地から、その成果を世界に向けて発信してまいりたい、と考えています。

 
以上

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