2012年7月27日

定例社長記者懇談会挨拶概要

 はじめに、「ガラス溶融炉B系における事前確認試験の状況」についてご説明します。
 既にお知らせしたとおり、先月18日から開始した事前確認試験は、今月4日に実廃液を使った試験に移行し、19日からは不溶解残渣を含んだ実廃液を用いた試験を実施しておりましたが、本日、最後の流下を行い、早ければ昼過ぎには終わる予定です。これにより、B系の事前確認試験は終了ということになります。
 これまで、模擬廃液を使って16バッチ、実廃液を使って25バッチ、このうち不溶解残渣入りは10バッチのガラス固化体を製造しており、試験は順調に推移し、ガラス温度を安定した状態に維持するとともに、流下性についても良好な状態に保つことができました。
 これも、2年間にわたる東海村の実規模モックアップ施設であるKMOCの運転を通じて得られた知見を対策として講じた成果と考えております。
 具体的には、温度計を追加設置し、ガラス温度の測定点を増加させたことにより、複数の温度データからきめ細かく総合的な温度管理を行うことが可能となったことに加え、溶融炉を加熱する電力量などから炉内の温度の変化を予測するプログラムを改良し、精度よく温度管理が実施できるようになったことなどであります。
 また、炉底部の温度が高いと白金族元素が底に沈降しやすくなるため、炉底部の温度を低く維持して運転する必要がありますが、この点についても管理目標どおり運転することができること、また、定期的に洗浄運転を行うことにより、白金族元素の炉底部への堆積を抑えながら運転できることも確認いたしました。
 今回のB系の事前確認試験の結果、ガラス溶融炉における安定運転のための運転条件の確認はできたものと評価しております。
 現在、今回の事前確認試験で得られた詳細なデータのとりまとめを行っております。その評価結果につきましては、来週早々、皆さまにご説明したいと考えております。
 なお、今後はB系のガラスをすべて抜き出すとともに、準備が整い次第、早ければ8月上旬頃からA系の事前確認試験のための溶融炉の熱上げを行う予定です。
 A系では、模擬廃液を用いて試験を行います。具体的には、流下ノズルの加熱性を確保するために新しく交換した結合装置を用いて流下条件の確認などを行う予定です。
 今後とも、安全を最優先に慎重に取り組んでまいる所存であります。
 なお、本年10月のしゅん工につきましては、これまで繰り返し申し上げてまいりましたとおり、震災による10ヶ月の試験の中断などにより、大変厳しい状況にあります。したがいまして、しゅん工時期につきましては、A系の事前確認試験の状況も踏まえた上で精査し、まとまり次第お知らせしたいと考えております。

 次に、「エネルギー・環境に関する選択肢」に対する私どもの考えを申し上げたいと思います。
 ご案内のとおり、先月29日に開催されましたエネルギー・環境会議において、2030年における原子力発電比率を「0%」、「15%」、「20~25%」などとする3つのシナリオが示されました。
 今回示された選択肢を見ますと、原子力の比率を減らすと同時に、CO2の観点から火力の比率も抑える。その分を再生可能エネルギーに大きく依存するシナリオとなっております。
 私自身、再生可能エネルギーは大いに進めるべきと考えますが、今回のシナリオで示された目標は本当に実現できるのか甚だ疑問であります。
 例えば、太陽光発電については、「15%」、「20~25%」のシナリオの場合、現在設置可能なほぼすべての住宅1,000万戸の屋根に導入するとしているほか、「0%」のシナリオでは、さらに200万戸追加して、耐震性が弱い等により現在設置不可能な住宅も改修して導入するとされております。
 また、風力発電についても、「15%」、「20~25%」のシナリオの場合、東京都の面積の1.6倍、「0%」のシナリオの場合には、2.2倍の面積が必要とされています。
 風力発電の適地は北海道や東北地方に偏在しているうえ、山間部が多いことなどを考えますと、その実現は非常に厳しいと言えます。
 これらを考えますと、結局、火力に依存することになってしまう。CO2問題も解決できずに、電気代も高騰し、家計や産業への負担が増え、企業の海外移転による産業の空洞化が進むのではないかと強く危惧するところであります。
 今月から、再生可能エネルギーの全量固定価格買取制度が始まりました。その負担は電気料金へ上乗せされる仕組みとなりましたが、ドイツやスペインでは、国民負担が増え、制度の見直しを迫られているという話も伝わってきております。
 こうしたことからも、やはり原子力発電は、引き続き大切なエネルギー源であり、今後も安全確保を大前提に、一定の役割を果たさざるを得ないものと考えます。と同時に、資源小国であるわが国におきましては、ウラン資源を有効活用し、環境保全にも資する、再処理をはじめとする原子燃料サイクルにつきましても、しっかりとこれを堅持すべきであると考える次第です。
 エネルギー政策は、5~10年経って失敗だったということは許されません。是非、現実をしっかりと踏まえた冷静な議論を強くお願いする次第であります。