2012年5月31日

定例社長記者懇談会挨拶概要

 はじめに、「ガラス溶融炉B系列における事前確認試験に向けた取り組み状況」についてご説明します。
 既にご案内のとおり、先週21日に流下性低下の原因と対策についてお知らせしました。
 その際にもご説明したように、今後の対策といたしましては、レンガ小片の発生を抑制するため、溶融炉の立上げや停止の際に温度変化を緩やかにすることといたしました。
 また、炉内にガラスを残したまま加熱すると、レンガの欠けが発生しやすいことがわかったことから、ガラスがない状態から加熱することとしました。そのため、溶融炉を停止する場合には、原則として炉内のガラスをすべて抜き出すことにしました。
 溶融炉の熱上げについては、21日から開始し、現在も溶融炉の温度など、各種データを確認しながら慎重に実施しているところであり、来週の半ば頃には完了する予定です。
 熱上げ完了後は、今回の流下不調の反省も踏まえ、今後の試験に万全を期す観点から、事前確認試験前に模擬ビーズを流下させながら流下確認と作動確認を行う予定です。
 流下確認では、念のため炉内に直棒をあらかじめ設置し、異物の発生状況について確認します。その後、作動確認では、溶融炉の温度計など改造した設備の健全性を確認してまいります。
 これらの確認作業が順調に進めば、事前確認試験は6月中旬から下旬頃には開始できるものと考えております。
 引き続き、このたび取りまとめた対策に留意し、安全を最優先に、慎重かつ段階的に作業を進めてまいります。
 
 次に、このほど新大綱策定会議において、原子燃料サイクルの政策選択肢の評価が行われましたので、私どもの考えを改めて申し上げたいと思います。
 これまでも繰り返し申し上げておりますが、私どもとしては、引き続き、「全量再処理」路線を選択すべきであると考えております。
 例えば、評価項目の1つである「経済性」については、平成16年の策定会議と同様、サイクルの総費用だけを比較しますと、「全量直接処分」が最も安いということになりました。
 しかしながら、ここには政策変更に伴って、現実的に発生することが避けられないであろうコストが十分反映されておりません。
 政策変更により、使用済燃料が返送されることになれば、各原子力発電所での使用済燃料の貯蔵管理容量を上回ることになり、順次、運転を停止せざるを得なくなります。
 このことについては、仮定の話ということで委員会ではあまり本格的な議論はなされませんでしたが、そうした場合の代替電源をどうするか。その電源に化石燃料が用いられた場合、約20兆円を上回る莫大な費用が必要となる恐れがある訳であります。
 青森県との覚書を踏まえれば、特にこの費用は総合的なコスト比較をする上で重要な判断材料になるものと考えます。
 さらに、わが国のエネルギー政策は、青森県の皆さまが「全量再処理」を前提として、長きにわたりご協力をされてきたことで成り立っているということであります。「ローマは一日にしてならず」と申します。地元の皆さまからのご信頼は、一朝一夕でいただけるものではありません。このことも決して忘れてはならないと思います。
 なお、このたびの評価項目には「国際的視点」もあげられております。
 世界で原子力発電の利用拡大が進む中、原子力発電技術を保有し、平和利用に限定した原子燃料サイクル能力を持つ唯一の国として国際貢献が期待されるとしており、こうした面からの評価・検討も重要であると我々は考えております。そのためにも、再処理を国の政策として今後ともしっかりと堅持すべきと考えます。
 今後、国民的議論を踏まえ、エネルギー・環境会議で方向が示されるものと聞いておりますので、今後の議論にあたりましても、政策変更に伴うコスト、そしてコストだけでは評価できない面、例えば立地地域の皆さまの思いなど、国民の皆さまが正しく判断できる材料を提示し、是非ともわが国の将来の視点に立った冷静で現実的な検討をお願いしたいと強く思っている次第であります。