日本原燃
2011年9月28日

 

定例社長記者懇談会挨拶概要



 はじめに、「再処理工場における現在の取り組み状況」についてご説明させていただきます。まず、震災の影響で事前確認試験の開始が遅れていることから、この間を利用しまして前倒しで実施していた安全蒸気ボイラの法定点検は、先月中旬に終了しております。
 また、今月9日に解除されました「電力の使用制限」についても、施設の設備点検を夏期にシフトするとともに、ピーク時間帯の運転を極力避けることなどにより、再処理工場の使用制限値を守ることができました。
 こうしたことから、事前確認試験は開始できる状況にある訳ではありますが、現在、青森県原子力安全対策検証委員会において、当社の緊急安全対策についてご議論をいただいているところでありますので、検証結果の内容などを踏まえ、事前確認試験の開始を検討してまいりたいと考えております。
 その検証委員会でありますが、今月17日の委員会では、「現時点で対応すべき緊急安全対策はとられている」とのご意見もいただいているところでありますが、今後とも委員の先生方からいただきました貴重なご意見をしっかりと受け止め、安全への取り組みを続けてまいりたいと考えております。
 この取り組みの一環でもありますが、全交流電源喪失を想定した夜間訓練は7月に1回実施しておりますが、その後もこの9月に2回ほど訓練を実施し、これまでに約280名が電源車からの給電や空気コンプレッサからの圧縮空気の供給などの確認を行っております。今後も、残る当直員160名を対象に夜間訓練を継続して行うとともに、冬場の厳しい状況の中での訓練も行う予定であります。

 さて、昨日、原子力委員会における原子力政策大綱の策定会議が再開されました。ご案内の通り、これからこの策定会議やエネルギー環境会議、あるいは総合資源エネルギー調査会などで、わが国の新しいエネルギー政策に関して議論が行われていくことになります。今回策定されますエネルギー政策は、まさしく今後の日本の将来を左右する極めて重要なものであり、とりわけ原子力政策大綱の策定会議では、私どもが進めております原子燃料サイクル事業について検証が行われると言われております。したがいまして、この機会に改めて私どもの考えをご説明したいと思います。
 再処理を進める意義、その必要性については、資源確保の面と環境保全の面から大きく2つあると言えると思います。まず、資源確保という面ですが、原子力発電所の運転で使い終わった使用済燃料を再処理することにより、有用な資源であるウランやプルトニウムを回収することができるということであります。したがって、これら回収されるウランやプルトニウムを軽水炉で利用するだけでも2割強のウラン資源の節約になる訳であります。例えば、国内に今ある約1万7千トンの使用済燃料を再処理し、すべてエネルギーとして利用するとすれば、国内の原子力発電所の約5年分、日本で消費する約1.5年分の電気に相当します。これは資源小国であるわが国にとりまして決して小さな値ではありません。
 次に、環境保全の面で言いますと、使用済燃料を再処理せずに直接処分した場合、貴重なエネルギー資源であるウランやプルトニウムをそのまま捨ててしまうだけでなく、天然ウランのレベルまで放射能の毒性が低下するのに要する時間は、ガラス固化した場合は約1万年、それに対して直接処分した場合は約10万年と、さらに長い期間になります。また、再処理し、高レベル廃棄物をガラス固化体とすることにより、使用済燃料を直接処分する場合に比べて体積が30%から40%に低減でき、処分場の面積も約半分から2/3に低減することができます。
 今後の議論に当たりましては、いま申し上げたようなことをいま一度しっかりとご確認いただくとともに、さらに次の3点についても留意していただければと考えます。
 まず1点目ですが、仮に再処理を中止するとした場合の原子力発電への影響、例えば「原子力発電所から運ばれた使用済燃料はどうするのか」、また、「原子力発電所に今ある使用済燃料の処理はどうやっていくのか」といった問題が発生してくることも、しっかりと認識していただきたいということであります。
 2点目は、立地地域の思いをしっかりと踏まえて対応していただきたいということであります。今月の六ヶ所村議会では、国などに対してサイクル事業推進を求める意見書が取りまとめられました。青森県や六ヶ所村が、これまで25年の長きにわたって国の政策に協力してきたという、その強い思いをしっかりと受け止めていただきたいということであります。
 3点目は、国際的な問題であります。すなわち、わが国は核兵器を持たない国で唯一、当然のことながら平和利用に徹するという約束が大前提でありますが、再処理が認められている国であるということであります。そして、これは先人達の大変な苦労の中で、認められた貴重な権利でもあります。そうした権利をたやすく放棄すべきではないと考えます。
 国がどういうエネルギーを選択するかは、それぞれその国のおかれた状況によって違ってくると思いますが、わが国にはエネルギー資源がほとんどない、そして、世界は貪欲なまでの資源獲得競争時代に入っているといった中で、わが国が技術立国として10年先、20年先も一流国であり続けるためには、原子力は今後も一定の役割を果たすべきであり、また、頼らざるを得ないと考えますし、「原子燃料サイクル」の意義も決して変わるものではないと確信している次第であります。是非、現実を踏まえた中長期的な視点に立っての冷静な議論をお願いしたいと考えております。

 
以上

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