日本原燃
2011年7月29日

 

定例社長記者懇談会挨拶概要



 はじめに、「再処理工場における安全性向上への取り組み」につきましてご説明させていただきます。
 当社では、これまでも過去の教訓を活かしまして、例えば、平成9年の「東海再処理工場アスファルト固化施設の事故」を受け、化学消防車の配備や24時間体制の消火専門隊の設置などを実施してまいりました。さらに、平成19年の「中越沖地震」では、電源車の配備、構内道路の補強、道路が大きく損傷した場合でも走行できる特殊消防車の配備など、約60項目の改善に取り組んできています。
 その取り組みの一環であります、新しい「緊急時対策所」がこのたび完成しました。
 お手許の資料をご覧いただきたいと思いますが、「緊急時対策所」は非常時の際に対応要員が参集し、現場の情報を収集して関係機関に発信するとともに、復旧活動の指揮を行う重要な拠点です。
 中越沖地震の時、東京電力の柏崎刈羽原子力発電所におきましては、緊急時対策所が入っていた事務本館が被災しまして、機能不全に陥ったという経験をしましたので、震度7クラスの地震が発生した場合でも耐え得る免震構造の「新緊急時対策所」の建設に、一昨年8月に着手し、昨日、建屋が完成しました。今後、通信機器やネットワークサーバーなどの設備を配置し、11月下旬には運用を開始する予定です。

 一方、先だってご説明しました「緊急安全対策」につきましても、一つひとつ着実に確認の作業を進めていまして、先月お話しました、全交流電源喪失を想定した夜間訓練につきましても、今週26日に実施しました。
 訓練には約120名が参加し、建屋内外の照明を消灯して、投光器やヘッドライト、トランシーバーなどの通信機器を使って、電源車からの給電、空気コンプレッサからの圧縮空気の供給、使用済燃料貯蔵プールへの注水を模擬した訓練を行いました。さらには、電源車や消防車の移動経路に、がれきなどの障害物があることを想定し、ホイールローダによる撤去作業を模擬した訓練も行っています。
 夜間ということで慎重に実施したこともあり、前回の日中の訓練と比べ、多少時間がかかったものもありますが、夜間の緊急時においても目標時間内での対応が可能であることを確認することができました。

 また、消火設備や防火水槽など、さまざまな水源が地震により、万が一使用できない場合の対策も検討し、普段取水しています二又川以外の敷地周辺十数か所の水源を調査し、尾駮沼など3か所を代替取水源として活用できることも確認しました。
 今後は、安全対策をあらゆる面から再検証し、繰り返し繰り返し訓練を実施して、安全性の向上に努めてまいりたいと考えています。

 さて、菅首相が「将来的には、原子力に依存しない社会を目指す」と表明されるなど、脱原子力のご意見も出始めていますので、改めて私どもの考えを述べさせていただきたいと思います。
 結論から申し上げると、エネルギー資源をほとんど持たない我が国の厳しい現状を考える時、原子力発電抜きには国民生活、産業活動、国力の維持・発展は考えられないということです。
 その中において、私どもが担っている再処理をはじめとするサイクル事業は、原子力発電の屋台骨を支える必要不可欠な事業であり、技術立国として10年先も20年先も一流国であり続けるためには、原子力発電そして原子燃料サイクルをしっかりと進めなければならないと考えています。
 たしかに、福島第一原子力発電所の事故は極めて重大で、未だに多くの福島県民の皆さまが避難生活を余儀なくされていますことは、同じ原子力に携わるものとして、断腸の思いであり、大変申し訳ない気持ちでいっぱいです。そして、この深刻な事故によって、社会の皆さまの信頼を大きく失ったことも十分認識をしています。
 しかし、一方で、我が国にはほとんどエネルギー資源がない、そして、我が国を取り巻くエネルギー情勢はますます厳しくなっていることもまた重い現実です。
 このような我が国にとって、エネルギーをいかに安定的に確保していくかということは、国家の行方を左右する極めて重要な問題であり、現実と向き合った冷静な議論をすべきと考えています。とくに、原子力という技術エネルギーを考えた場合は、長年築いてきた技術や育ってきた人材、また、ご支援いただいている立地地域の皆さまとの関係、さらには、核兵器を持たない我が国が、平和利用に徹することで濃縮、再処理を認められたということは、国際交渉を積み重ねて得られた貴重な権利であり、これらを本当に捨ててしまっていいのかという点について、熟慮に熟慮を重ねるべきではないかと思います。
 捨てることは一瞬でできますが、技術にしろ、人材にしろ、そして地元の皆さまの信頼や国際関係は、二度と取り戻すことはできなくなるからです。
 一方、多くの期待が寄せられている「新エネルギー」は、基本的には私自身も大いに活用していくべきと思いますが、やはり、天候に左右される不安定さを含め、安定的な量の確保へのハードルは極めて高く、さらにコスト面でも現時点では相当に高い。仮に、固定価格買取制度を導入された場合は、家庭や産業への負担が心配されるところです。
 また、世界に目を転じてみると、福島の事故を受けての世界各国の動きとしては、米国、イギリス、フランス、ロシア、韓国などは、原子力発電の一層の安全性向上を図りつつ、原子力発電を重要なエネルギー源に位置付けており、中国やインドも開発を継続するとしています。また、ベトナムやトルコ、リトアニアなども日本からの新規導入を期待しているところです。
 チェルノブイリの事故後と同様に、ドイツやイタリア、スイスは脱原子力の方針を打ち出しましたが、他のヨーロッパの国々と電力を融通し合えるという点や、その他のエネルギーを取り巻く諸情勢が、我が国とは大きく異なることも忘れてはならないと考えます。

 さらに、私どもが進めています「サイクル事業」について申し上げますと、我が国のエネルギー政策のもと、昭和59年の立地申し入れ以来、青森県および地元の皆さまに大変なご理解とご協力をいただき、濃縮事業、埋設事業などはすでに平成4年から操業していまして、再処理事業につきましても、20年以上の歳月をかけ、主要な設備は完成し、しゅん工まであと一歩のところまできています。
 ご承知のとおり、再処理で得られるウランやプルトニウムは原子炉の燃料として再利用することにより、エネルギー資源の乏しい我が国にとっては、貴重なエネルギー源となる訳です。また、再処理することによって、高レベル廃棄物をガラス固化体として安全・安定な形で管理することができるようになり、放射能の有害度や廃棄物の体積および最終処分場の面積を低減できるというメリットもあります。
 こうしたことからも、原子力発電と原子燃料サイクルを一体として、今後も我が国としては、引き続き進めていくべきと考えていますが、その大前提は何よりも安全確保です。
 私どもとしましては、今回の福島の事故を深く反省し、地域の皆さまに絶対にご迷惑をおかけするようなことがあってはならない、地域の皆さまのご信頼を絶対に裏切るようなことがあってはならないという決意で、今後の事業運営に取り組んでまいる所存ですので、是非、引き続きご理解いただければと存じます。

 
以上

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