日本原燃
2008年12月24日

 

定例社長記者懇談会挨拶概要



 冒頭まず、私から申し上げますのは「かくはん棒の曲がりへの対応と炉内上部の観察結果」についてであります。
 先々週、炉内でかくはん棒が曲がっていることが確認され、炉内部に損傷を与えた可能性も考えられたことから、さる11日に法令報告として国へ報告した後、先週19日には経過報告として今後の調査と作業の方針等について国へ報告いたしました。そして今日は、その後の対応と炉内上部の観察結果等について報告させていただきます。なお、この観察結果については、国と青森県そして六ヶ所村へ本日この懇談会に先立ってお伝えいたしました。
 まず、曲がったかくはん棒は、20日に周辺機器に損傷を与えないよう十分な対策を講じた上で引き抜きを完了しました。その上で22日にはカメラを炉内に入れ、炉内上部の観察を開始することができました。そして、このたびその観察結果がまとまり、新たに炉内の天井の耐火レンガの一部が損傷していることが判明しました。
 既に、本事象による施設内外への放射線等の影響がないことを確認しており、また、かくはん棒にかけた荷重と炉底部の構造物の強度との関係を精査した上で、負圧の維持や閉じ込め機能等が確保されていることを確認いたしております。更には、今回の耐火レンガの一部損傷についても必要な断熱機能と構造的強度が維持できていることをこのたび確認いたしました。したがいまして、本事象に関して安全上の問題はないということであります。
 そして今後は、溶融炉の炉底部について詳細な調査を実施するために、炉内ガラスの抜き出しを行う予定であります。また、ガラスの抜き出しにあたっては円滑かつ確実にそれを実施するために、ガラスの流下性を向上させる措置を講じる検討・準備を進めております。
 いずれにしても、本事象に関する原因究明等に全力を尽くしてまいる所存であります。

 一方、「ガラス固化試験」は2系統ある溶融炉のA系で昨年11月に開始いたしましてから1年余りがたちました。そこで、これまでを振り返り、簡単に総括をいたしたいと存じます。
 開始して1カ月余りの昨年末は、炉内の温度管理の問題に直面し、次に今年の夏は流下ノズルの付着ガラスの問題にぶつかりました。そして、当社は、こうした課題に一つ一つ的確に対応してきた結果、将来に役立つ技術や知見、ノウハウを着実に身に着けてきていると考えております。
 その具体例が「温度管理のノウハウ」や「炉内残留ガラスの除去技術」、そして「流下ノズルの付着ガラスの除去技術」等であり、これらの習熟については、さる10月にガラス固化試験を再開した時点で手応えを感じることができました。
 すなわち、最初のガラス固化体22本の運転では、低粘性流体や偏流の発生抑制を図ることができ、安定した運転状態を維持することに対して一定の成果を得たわけです。
 また、ガラスの試験を通じ、溶融炉に関して安全上の問題は発生せず、すなわち作業員の安全上のトラブルも施設内外への放射線等の影響もありませんでした。このことは、ガラス固化設備の安全性の高さ等を示すものと受け止めております。
 一方、私どもが苦戦をしているガラス固化という工程について、海外の先行プラントでは果たしてどうだったのかというと、フランス、イギリスともに相当な苦労をかつて重ねたようです。
 私どもは、ガラス固化について、基本的に運転技術の習熟の問題と考えていますが、海外の先行プラントの例をみても、難しい技術ということであればあるほど、逆に、更に果敢な闘志を持ってその課題解決に努め、再処理工場の各工程の最後の最後の工程であるガラス固化試験を乗り越えるよう、登山でいえば最後の「頂上アタック」に来年こそ取り組みたいと考えているところであります。

 次に、今年をエネルギーの視点で振り返りたいと存じます。
 今年は、ここ数年続いてきた「第三次オイルショック」とも云える原油価格の高騰がさる7月に頂点に達し、147.27ドルという史上最高値を記録しました。
 そうした原油価格高騰の流れの中で、4月にはフランスのフィヨン首相が日仏修好通商条約締結以来の交流150周年という大きな節目に、六ヶ所再処理工場へおこしになりました。そして「六ヶ所再処理工場は日仏の35年間におよぶ技術協力の象徴である。日仏は原子力の賢明な利用で世界の先導役にならなければならない。」という強い呼びかけをなさいました。私どもは、大変光栄に思うと同時に、身の引き締まる思いがした次第であります。
 また、6月にはG8と3カ国のエネルギ−相会合がここ青森市で開催されました。全世界のエネルギ−消費の65%を占める11カ国の代表者が、地球温暖化対策とエネルギー面からの対応、CO2の削減策等について議論を重ねました。そして、原油価格高騰への懸念の共有と原子力等の活用によるエネルギー源の多様化の必要性を訴える「青森宣言」が採択されたことは、大きな意義があったと考えております。
 一方、9月中旬以降、米国に端を発する世界的な金融危機と景気後退に伴う需要減少等によって原油価格の下落が始まりました。今月に入り40ドル台を切り、先週は4年10ケ月ぶりに一時32.40ドルを記録して、ピークの4分の1程度の低水準が続いております。このように、今年はまさに「激動の1年」でありました。
 その中で、原子力は地球温暖化問題の解決に役立ち、しかも量・質・コストの各面で優れる安定したエネルギー源であるということが国際的に評価されました。また今年、記録的な高騰の後、ごく短期のうちに暴落した原油価格と比べ、ウラン価格がそれほど下落していないことを考えた時、中長期的な視点からも、非化石燃料である準国産エネルギーを生み出す再処理を含めたサイクルの必要性を改めて痛感した次第であります。
 それだけに、サイクル事業の経営をあずかる立場としては、ますます大きな使命を感じるとともに、現在のガラス固化試験に腰を据えて取り組み、サイクルの輪を何とか完成させたいと更に強く考えている次第であります。
 同時に、地元企業の立場としては、国際的な金融危機や経済の混迷等を反映して企業の景況が悪化する中で、今後の県内経済の行方を少なからず懸念しているところであります。そうした視点からは、私どもは特に地元発注の拡大と地元雇用の安定維持、そしてその礎である安全・安定運転の維持を、地域の一員である私どもの大きな使命としてしっかりと受け止め、来年も前向きに取り組んでまいります。
 具体的には、今後も新規地元発注を更に拡大していくとともに、六ヶ所村で働く当社と協力会社の職員約四千数百名の内の約6割に上る地元雇用の確保を、安全・安定運転の継続とあわせて同時達成してまいる所存であります。
 私どもは、こうしたビジネスの「輪」、雇用の「輪」、そして地域共生の「輪」を今後ますます大切にし、地元経済の活性化に何がしかお役に立ちたいと考えているところであります。

 次に、再処理事業以外の当社各事業の特筆すべきことを申し上げますと、濃縮事業では、既設の遠心機に比べて4〜5倍の高い性能を持つ新型遠心機へ置き換えていくために必要な安全協定に基づく事前了解を、青森県ならびに六ヶ所村からいただき、今月16日には事業変更許可申請書を国に提出いたしたことであります。また、埋設事業では、低レベル放射性廃棄物いわゆるドラム缶の埋設が1号埋設・2号埋設あわせて通算で20万本を達成し、着実に進展しております。
 このように、当社の各事業はMOX燃料加工も含めて、内外から注目と期待を集めております。来年も安全を第一に、協力会社の皆さんと力をあわせて、一つ一つ着実な前進を図ってまいる所存であります。
 最後になりましたが、今年1年間本当にありがとうございました。来年も何卒よろしくお願い申し上げます。

 
以上

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